人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

優良企業経営ながらも延命の道を選ばす その2

その1からの続きです。


M&Aを決断し僅か一年後、予測通り自力経営が継続困難となるハードルが立ちはだかり、物凄いスピードで大幅な減収減益の危機を迎えました。私がM&Aの道を決断していなければ、会社は倒産かあるいは自主廃業への道しか残されなかったでしょう。


一億円の資金的余裕など大手企業にとってはたいした金額ではないかもしれません。しかし、私が経営していたような中小零細企業にとっては、金融機関からの融資に依存することなく、いつでも自由に活用でき、返済の必要のない一億円は、大変魅力的な資金でした。
さらに、この一億円を担保に、新たに数億円の資金を金融機関から調達することも可能です。それを裏付けるように、金融機関から何度も数億円の貸付要望が届いていたのです。


その一億円の資金がありながら、自力での企業存続の道を選ばず、M&Aを選んだ私の決断は間違いのないものであったと、今でも自負しているところです。


当期の成績がよくとも、来期もよいという保証はどこにもありません。来期もよいはずだというのは、単なる楽観論にしか過ぎないのです。現代のように変革スピードの早い経営環境下では、会社存続の保証などどこにもなく、綱渡りと揶揄される中小企業の経営環境の実態なのですから。


企業を生き返らせるために、金融機関からの融資が救済のための手段と考えられてきたのは、既に過去の考え方となっています。一億円の内部留保などすぐにも消え失せてしまうような波乱の多い経営環境下、いまやまさに経営能力とスピードのある判断能力が試されている時代なのです。


とくに中小企業ににあっては、経営者は金融機関からの融資をあてにせず、場合によっては思いきって自力での会社存続を断念する勇気を持ち、そこから新たな起業の道を歩むことも、経営能力として求められる時代を迎えているのではないでしょうか。


その3に続きます。