人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

創業者の頭の中だけにある株主名簿、ボケたらどうする 後編

前編からの続きです。 この半年後に、父が認知症になってしまったのです。親がボケてしまったならば、誰が、親の財産を管理し、生活療養等の世話や物事の決定を行うのか、みなさんは考えたことがあるでしょうか。先代経営者名義の多大な事業用財産がある場合は、面倒なことになります。 M&A売却資金で第2創業を計画し、第2創業資金の一部となる、父の売却益の預金口座を私が管理していても、所有者は父です。M&A売却後…

創業者の頭の中だけにある株主名簿、ボケたらどうする 前編

事業承継しようとしている同族中小企業では、自社株式が分散しているケースが多いのではないでしょうか。分散した株式でも先代経営者のツルの一声で自社株式のとりまとめができると考えているようですが、困難を極めることが多いのも事実です。それでも名義株の株主がわかっていれば良いのですが、経歴の長い会社では株式が拡散しており、株主が誰であったかわからなくなってしまっているケースが多いのです。 私の売却した会社…

「M&Aで生き残る社員と追い出される社員」後編

前編からの続きです。 エンプロイアビリティという言葉があります。エンプロイアビリティとは雇用され続ける個人の能力のことです。エンプロイアビリティには二つの能力の意味があります。勤務している会社内で絶えず仕事を任せられる「雇用継続能力」と、他社に採用される「雇用され得る能力」のことです。 終身雇用から能力主義への変革という現代のビジネス社会においては、ビジネスパーソン自らの意思で職業能力の開発を行…

「M&Aで生き残る社員と追い出される社員」前編

中小企業のM&A売却は「秘密保持」が大条件となり、社員にも秘密裏で進んでいますので、売却の事実はある日突然、売却が成立してから社員に公表されることになります。社員にとっては晴天の霹靂でしょう。しかし、中小企業のM&A売却では社員の雇用が守られます。 心の余裕や踏ん切りがつかないまま、突然経営者から売却を告げられるのですから不安感の絶頂に陥るかもしれません。特に、中小企業に従事する社員にとって、M…

税務署からの優良法人表彰後の自社売却

私がM&Aで売却した会社は、売却の二年前に法人税の優良申告法人として地元の税務署から「表敬状」を頂戴しました。三度目の表彰です。売却前の法人税の申告では、三千五百万円の経常利益に対して、一千五百万円の法人税の申告でした。 中小企業においては、節税の一手法として経営者の役員報酬を上げて経常利益を少なくするという考え方があるのかもしれません。税金を払うくらいなら、役員報酬を大きくして、税金を減らそう…

取引口座を見直すと会社が売れる

結婚はご縁です。学歴も家系も良く、美男美女であっても、縁がなければ結婚には至りません。 なんであんな美女が、どこから見ても、ピンとこない冴えない輩と結婚したのだろうか?というケースに遭遇したことはありませんか。 私の結婚は40数年前、家内は日本航空国際線の客質乗務員でした。当時、私の身長は背伸びして160センチメートル(現在は年と共にさらに縮小しましたが)、体重74キロで短足。さらに、あちらの世…

銀行融資に依存しない売却益での第2創業

私が経営していた会社は売却を決断した時点で、資産から負債を差し引いても一億円の現金が残る状況でした。通常であれば、この資金を基にさらなる投資か、新事業を始めるのではないでしょうか。 負債無し、無借金の経営状況! 外観から眺めれば優良企業です。優良企業で一億円の銀行預金という状況でしたので、どこの金融機関からも融資を受けられる状況でした。金融機関かの営業攻勢も度度で、ちょっと鼻が高かったことも記憶…

M&A売却を成功させる経営者の精神力

M&A売却では抵抗勢力の存在に注意が必要です。同族による反対や批判、中傷です。批判や中傷をする側には、受けている者の心の痛みはわかりません。批判や中傷をしているという意識さえないのかもしれません。私自身も同族からのバッシングがありました。 売却決断前、優良企業ながらも一歩まちがえば倒産に至る兆しも現れました。万一会社が倒産すれば、金融機関の連帯保証をしている創業者と私の双方に、一億円近い返済義務…

実質社長 と 暫定社長

同族中小企業には同族経営であるが故の構造的問題が潜んでいます。 構造的問題に背を向けて事業承継に取り組んでも、望ましい成果を期待することはできません。望ましい成果とは、円滑に事業承継が進み、後継者が仮免社長から、実質社長として脱皮することです。 仮免社長とは、ここでは経営権のない社長を指し、実質社長とは経営権を取得できる自社株式を所有している社長を指します。両者とも私の造語ですが、仮免社長を自動…

自社の値段

「M&Aを決断したものの、自分の会社はいったいいくらで売れるのだろう???」 中小企業のM&Aは売り手と買い手の合意で売買価格が決定しますが、そのタタキ台が必要となります。このタタキ台になるのが「企業評価書」であり、第三者が客観的に算定したものが基本となります。 中小企業の企業評価の多くは、一般に「時価純資産価格」に「営業権」を加算したものが適用されます。時価純資産額とは、帳簿上の資産を時価に修…