人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

あなたの会社の後継者はだれですか?

中小企業の事業承継は「親族」「社員」「M&A」の3つです。5年先、10年先あなたは誰に会社を託すのでしょうか。 1親族への承継 身内の子供に承継させるのが一般的ですが、後継者不在の中小企業が増えています。後継不在とは身内に子供がいないというだけではなく、子息はいるが、既に社会人として別の道を歩み、跡を継がずに生計が成り立っているため承継しないというケースです。現経営者が自分の辿って来た苦労を振り…

事業承継価値観の変化 その2

その1でも述べましたが後継者不在から事業継続できない中小企業が増えています。少子高齢化という構造問題が日本経済に重くのしかかっているのです。さらに、少子高齢化以外にも後継者の価値観の変化で実子が親の会社を継ぎたがらなくなってきていることも事実です。 価値観の変化とは、同族中小企業の創業者は、世襲で実子が世代交代するのを当たり前と思っている反面、実子の方は職業選択の自由を掲げて、親の事業を継承した…

事業承継価値観の変化 その1

後継者が存在せず、自社の出口がわからずに毎日を送っている中小企業経営者が多数存在します。 同族企業の事業承継をとらえた場合、先代社長から後継者にバトンタッチする時期の商品や、ビジネスモデルが十年経過しているならば、事業承継した商品やビジネスモデルだけでの事業継続は不可能・・・。私は2002年(当時49歳)にこのような考えの下、M&A売却で業態転換の起業資金を確保し、現在のメルサを第二創業に導きま…

大リーグとM&Aの代理人

ワールドベースボールクラシック(WBC)は日本チームが世界一になり、大谷選手、ダルビッシュ選手が脚光を浴びた一方で、松坂大輔さんが準決勝で始球式を行っていましたので、彼の仲介人とM&Aの仲介人に焦点を充ててみたいと思います。 2007年、米大リーグレッドソックスへの入団が決まった元西武ライオンズの同投手が、ボストンから帰国後した日、成田空港で会見した時「交渉不安でした」述べていた姿が印象的で記憶…

本契約後社員の動揺を土下座で鎮める 後編

前編からの続きです。 売却の本契約が終了すれば、譲渡側企業社員へのM&A発表が控えています。M&Aは秘密保持で始まり、秘密保持で終了するため、会社売却による経営者交替は突然社員に発表されることになるのです。 社員への発表は、契約締結から十日後の朝礼時と決まりました。社員発表には、仲介アドバイザー側二名、買収企業側から五名が来社し、まず私から状況説明を行い、アドバイザーからの説明、最後に買収企業側…

本契約後社員の動揺を土下座で鎮める 前編

二〇〇二年年二月二十六日、私のM&Aは正式な本契約である「株式譲渡契約」を締結するに至りました。本契約の締結は京都に本社がある譲り受け側企業において予定されていましたので、私は前日から京都に宿泊することにしました。宿泊先は譲り受け側企業の配慮で、一流ホテルに私たち二人分の予約がされていました。 本契約の調印には当初から私一人で臨む予定でいましたが、相手側は夫婦で宿泊するものと勘違いし、二人分のス…

顧問税理士との協働

自社を売却しようとする際、自社の顧問税理士を蚊帳の外においてはいけません。 そうかといって、 売却を税理士任せにしてもいけません。 私は自社の顧問弁護士に一切相談せず売却を決断しました。さらに、仲介会社を自力で見つけ、M&Aを進めましたが、私のケースは例外的な流れの売却だったかもしれません。 M&A成約前に税理士と連携しながら進める作業があります。前回投稿した「買収監査」です。 譲受側の会計士や…

わたしの人格と企業理念が問われた買収監査 後編

前編からの続きです。 私の経営していた会社は、買収監査の一年前、所轄の税務署から税務調査を受け、「優良申告法人」として表彰されたという経緯があります。そのときに、資料準備の統括をしたのが妻であり、二人で税務調査のインタビューに応じた経験がありました。 税務調査時に要求があったわけではないのに、同様に過去三年分の帳簿や伝票を揃え、その姿勢が認められたのか、「優良申告法人」として表彰されるに至ったの…

わたしの人格と企業理念が問われた買収監査 前編

M&Aの中で、買収側が売却側企業に対し財務や事業状況を等の調査を行うデュデリジェンスという過程があります。「買収監査」です。 デュデリジェンス前の基本合意契約までは、私の提供している経営資料が正しいものとして交渉が進められ、譲渡額の合意まで行います。買収側の企業にとっては、私の提出している資料がほんとうに正しいものなのか、あとになって簿外債務などがでてきはしないかと気になるはずです。 M&Aの過…

代表権と経営権の存在

私が売却した会社の経営権と代表権を説明しましょう。 売却時の役員は、創業者である父が代表取締役会長、後継者の私が代表取締役社長、取締役に母と妻という、典型的な同族中小企業の役員構成でした。 私が売却した同族企業の役員構成を知り、みなさんはどのように思うでしょうか。 社長は私でしたが、代表権が父と私の二名です。ここに私の会社の事業承継がうまくできなかった理由の本質があったのかもしれません。 前述し…