人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

騙されるなM&A詐欺と特殊詐欺 その2

その1からの続きです。


話しは変わりますが高雅な特殊詐欺が昨今話題になっています。
特殊詐欺とは、犯人が電話やハガキ(封書)等で親族や公共機関の職員等を名乗って被害者を信じ込ませ、現金やキャッシュカードをだまし取ったり、医療費の還付金が受け取れるなどと言ってATMを操作させ、犯人の口座に送金させる犯罪のことです。


今巷で大きな話題になっている、高額な特殊詐欺や全国で相次ぐ連続強盗事件との関連が疑われているフィリピンの入管施設に収容されていた日本人4人が昨日までに強制送還されたことを多くのマスコミが報じています。


特殊詐欺とM&A詐欺に類似点があるとすれば、どちらも、信用性を見極める事ができない心理状態下で相手の言いなりになってしまうことです。


M&Aには売却する側と買収する側の企業が存在します。私の場合は企業を売却する側でしたが、ある程度の譲渡先の候補があったとしても、売り手側から候補先に話を持ちかけるにはたいへんな勇気と決断が必要でした。


私の経営していた会社は、M&A決断までは実質無借金の優良企業という自負心がありましたからなおさらです。そこには優良企業がゆえのプライドが邪魔し、自社の売却をこちら側から持ちかけるなど「もってのほか」という気持ちが脳裏をかすめてしまい、二の足を踏んでしまうものなのです。


もちろん、優良企業でなく債務超過企業であったとしても、M&Aを決断した経営者というものは、見栄とプライドが邪魔する心理状態に陥るものだと思います。


このような心理状態のなかで、私が真っ先に譲渡の相談をしたのが、開業以来口座を開設していた、ある地方銀行の支店でした。しかしながら、二十年前の当時、地方銀行の支店においては中小企業に対するM&Aの事例が少なく、支店からM&Aの知識のある本店へと相談が移行していくうちに多くの時間を費やしてしまったのです。


私が相談した頃は、M&Aはまだまだ大企業の経営戦略であり、大半の取引先が中小企業である地方銀行では、中小企業に対するM&Aの仲介実績は少ない状況だったのです。しかしその後は、地方銀行の多くが中小企業のM&Aに関する事例研究に取り組んでおり、いまでは地方銀行もM&Aの相談窓口のひとつとなっています。


ところで、私の売却には相手の信用を裏付ける〝偶然〟がありました。


その3に続きます。