人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

M&Aという戦場での盟友は誰か その3

その2からの続きです。


売却手続きが進むにつれ、株券ばかりでなく、土地・建物の不動産の問題等、M&Aの最終的な契約が近付いてくればくるほど、さまざまなトラブルが発生しましたので、軍師的存在のアドバイザーの能力のすばらしさとありがたさを実感しました。これは実践した者でなければわからないことでしょう。


父、母所有の不動産の問題に関しては、父と母から私宛にすべての権利を一任する旨の念書をもらいましたので、私とM&A専門会社の二者で問題解決に向かうことができました。


もし個人の我欲が介入し、父、母も含めて多くの介在者がいて混乱するようなことがあったならば、私のM&Aは成功に至らなかったと思います。


売却当時は引退同然の待遇で、会社の実情に精通していない父と母には、M&Aなくしては会社再生の道がなく、下手をすればすごいスピードで倒産に至るという危機感がまったくなかったのです。M&Aでの手段以外に起死回生の道はないと確信していた私は、恐らく、鬼の形相で問題にぶつかっていたと思います。


 経営者というものは公人でもあり、身内や同族の処遇よりも、社員の処遇を優先する立場と責任があるはずです。


四十八名の社員とその家族の生計を守ることをまず優先し、私はさまざまな決断と対処を施してきました。


M&Aは、中途半端な決断と行動ではすべてを水の泡にする危険も秘めています。その意味でも私は、M&Aを成功させるために、まず、自分との闘いであることを覚悟し取り組んだのです。


 後日談があります。前述しましたが当時私のM&Aを担当してくださったT氏が、仙台に移住した私の会社を一昨年訪問してくれたのです。ホームページで私の会社を知ったのだそうです。


今は、日本M&Aセンターを離れ、自身が持つ US CPA(米国公認会計士)の資格取得のお手伝いをするビジネスに従事されているとのことです。売却から十五年後の嬉しいできごとでした。


現在では仲介会社を通さず、インターネットでマッチングを可能にするシステムも横行しているようです。このようなシステムを活用する場合において、もっとも重要なことは、譲渡側、譲受側、双方の企業の信頼性をどのように見極めるかではないでしょうか。


仲介会社を通さずとも、譲渡側、譲受側、双方の顧問税理士の介入は必須です。譲り受け側は、譲渡側の決算書、損益計算書を精査し売却の可否を決めます。その資料が顧問税理士によって精査されていることになれば信頼できる資料となります。M&A交渉において、双方の税理士の介入なき場合はよほどの注意が必要です。