人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

創業者の退職慰労金をM&Aで捻出する

株式譲渡で会社を売却すると、「一株当たりの金額 × 持ち株数」で譲渡金が支払われます。


私がM&Aで会社を売却する前のことですが、


社長であった後継者の私が、私の父である会長(創業者)に退職金を支払い、勇退してもらうには、とてつもない金額の退職金が必要であることが分かりました。


一般的な経営者の退職金は「最終報酬額 × 勤続年数 × 功績倍率」で算出されます。同族会社では功績倍率という項目が加味されます。当時調べたところ、中小企業の創業者クラスの功績倍率は、3倍程度というところでした。創業37年を経過したところで、最終報酬額が、70万円でしたので、計算式に充当し算出してみると・・・


なんとその額が七千万円を超すことが判明しました。


当時経営していた会社は優良企業でしたので、現・預金も退職金支払いをカバーできる潤沢なものがありました。さらに退職金は損金算入できるという事を理解していましたが、零細企業にとつては手痛い出費となります。


しかしながら、創業者であり、父である社長への功労という意味では、渋ることはできません。


さらに、勇退してもらうということは、事業承継ですから、経営権の取得が必要です。経営権を取得するためには、父の所有する自社株式を取得しなければいけません。当時の私の保有株式は15%だけでした。社長である父と母が70%保有していました。この株式を私が引継ぎ事業承継していくには、数億円必要という事も判明しました。


当然のことながら退職金と経営権取得のために要する費用の捻出に頭を抱えました。


しかしながら、創業社長と私にとって格好の方法が見つかりました。M&Aで会社を売却し会長は株式譲渡金を受け取り、後継者であった社長の私が退職金を受け取るというスキームです。


私は優秀なM&A仲介会社と担当者に巡りあったため、このようなスキーム提案を受け、譲渡側への交渉も依頼できました。仲介会社の優秀性は、売却が進捗するに従い、ひしひしと感じられるものです。


譲渡先企業が退職金の支払いを許すか,否か。退職金を支払うあて(現・預金)があるか否か、という事が前提となりますが、売却時には、株式の譲渡益と退職金双方の受け取りができます。


そのためには、役員退職金規定の事前準備が必要です。一度チェックしてみてください。


このようなスキームによる実現は、私一人では不可能でした。


仲介会社の信用度と力量を思い知らされた一コマでした。