人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

「売れるワンマン経営」と「売れないワンマン経営」


放漫経営で赤字会社。


経営上では問題のある会社ですよね。しかし、赤字の中身を精査してみたら、社長の役員報酬が極端に高く、赤字になっていたらどうでしょう。


例えば、中小企業でここ数年、年間1、000万円の赤字会社。数字だけで判断すれば、魅力のない会社かもしれません。


でも極端な話ですが、


社長の役員報酬が年間2,000万円であったとしたらどうでしょうか。役員報酬を半額の1,000万円にしたら、


黒字会社になります。


社長の役員報酬は株主総会での了承が必要ですが、大半の同族企業は社長が大半の株式を保有し、オーナー経営者となっているケースが多いものです。つまり、社長の役員報酬も社長自ら一人で決定できる訳です。


ワンマン経営者という点にスポットを当ててみると、次の二つのワンマンが考えられます。


・ワンマンな性格で放漫経営
・ワンマン社長だが、社長のトップ営業で会社が存在している。


以上の二つのワンマンを考察した場合、経営やマネジメント上では両社とも問題がありますが、売却しやすいのはどちら?かというと、前者の「ワンマンな性格で放漫経営」です。


放漫経営ということは、社長の経営能力や管理能力に問題があるという事になり、優秀な社員が存在しているので、会社も存在していると言い換えることができます。


「社長の経営能力が乏しくで、管理能力もいまいちであるが、社員に助けられている」と置き換えてください。このケースであれば、社長不在でも事業が稼働しているととらえることができます。


「放漫経営で、高額の役員報酬」の会社が、社長交代で、高額な役員報酬を是正する余地があれば、黒字になる要素があると考えることができます。


一方、放漫経営とは反対に、俺についてこい的なワンマンで、社長のトップ営業力の影響が大きい中小企業では、買手が懸念を示すかもしれません。


中小企業のM&Aは、社長の交代だけで、社員の雇用が継続されます。あらゆるところで、トッププレイヤーとなっている社長が、売却と共にいなくなってしまうと、買収した会社の機能がストップしてしまう危険性があります。譲受側の会社はこの点を危惧します。


極端な考え方かもしれませんが、


社長がトッププレイヤーとして売却側の業績を支えている会社よりも、社員が業績向上を担っている会社の方が売却しやすいかもしれないということです。


中小企業の場合は、オーナー社長の力量に依存しながら業績を上げているケースが少なくありません。


社長がトップ営業マンで、誰よりも働いて成果を出している場合には「買収後、売却後の社長が抜けてしまうと、業績が大幅に崩れてしまうのではないか?」と買い手が懸念してしまいます。


この懸念を払拭し売却するには、同業者に狙いを定め、譲渡先候補とすることも一案です。同業者であれば、売却後、譲受側企業から派遣されてくる社長が、同業種の経営はもとより、事業内容を把握しているからです。


私の譲渡先も同業者でしたので、社長交代後も、比較的スムーズに引継ぎが完了し、現在も順調に推移しています。


私もある意味ワンマン社長であったと振りかえっています。放漫経営であったか、否か、は想像にお任せします。