人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

私の事業承継いばら道のブログ記事

私の事業承継いばら道(ムラゴンブログ全体)
  • 経営権で支配する創業者の権力 その1

    一部の同族中小企業の創業者と後継者の間には、外部から理解されにくい大きな力関係があります。そこでは組織というものが機能せず、絶対的な力を保持している創業者の鶴の一声で物事が進んでいきます。 そんな馬鹿な…と言われるかもしれませんが、同族中小企業を顧客とする一部の税理士の皆さんにはうなずいて頂けるの... 続きをみる

  • 銀行融資に依存しない売却益での第2創業

    私が経営していた会社は売却を決断した時点で、資産から負債を差し引いても一億円の現金が残る状況でした。通常であれば、この資金を基にさらなる投資か、新事業を始めるのではないでしょうか。 負債無し、無借金の経営状況! 外観から眺めれば優良企業です。優良企業で一億円の銀行預金という状況でしたので、どこの金... 続きをみる

  • 譲渡価格の目安を決める企業評価書

    私の手元に「企業評価書」があります。売却時に仲介会社が作成した私の会社の値段です。この企業評価通りの価格で売却ができました。 「企業評価」は会社の値段、つまり譲渡価格の目安を決めるもので、中小企業の場合は、相場のないものに値段をつける行為です。M&Aの仲介会社は、譲渡希望を受けると、初期の段階で譲... 続きをみる

  • 過去の経営手法に立ちはだかる壁 前編

    消費生活用製品安全法という法律があります。 事業者は「製品欠陥の有無に関わらず、重大事故の発生を知った日から起算して十日以内に監督官庁に報告しなければならないというものです。 意図的に隠した場合は制裁が待ち受けています。意図的に経営者が隠そうとしても、いつかは内部告発で大問題になってしまうご時世で... 続きをみる

  • 創業者の退職慰労金をM&Aで捻出する

    株式譲渡で会社を売却すると、「一株当たりの金額 × 持ち株数」で譲渡金が支払われます。 私がM&Aで会社を売却する前のことですが、 社長であった後継者の私が、私の父である会長(創業者)に退職金を支払い、勇退してもらうには、とてつもない金額の退職金が必要であることが分かりました。 一般的な経営者の退... 続きをみる

  • 母他界の3日後に認知症の父が後を追う その3

    その2から続きます。 成年後見制度というものがあります。 認知症などの理由で判断能力の不十分な方々の財産や、日常生活を保護する制度です。判断能力を欠く状況にある人を守るために、裁判所が「後見人」を選任します。 誰が後見人に選任されるか・・・・ 先代経営者が認知症になった場合、「後見人」の選任が事業... 続きをみる

  • 母他界の3日後に認知症の父が後を追う その2

    その1からの続きです。 M&A売却成立の半年後、元気だった父が突然、認知症になってしまいました。記憶が正常なうちに株主の調査を行いましたので、株主の調査も難航はしましたが判明することができました。 父の認知症に加え、経営支配権をもつ父と母が同時に他界するなどとは考えもしないことが現実として起こりま... 続きをみる

  • 母他界の3日後に認知症の父が後を追う その1

    同族中小企業では、自社株式が分散しているケースが多いのではないでしょうか。分散した株式でも先代経営者の鶴の一声で自社株式のとりまとめができると考えているようですが、困難を極めることが多いのも事実です。 それでも株主がわかっていれば良いのですが、経歴の長い会社では株式が拡散しており、株主が誰であった... 続きをみる

  • 売却を決めた後継者のたわごと

    後継者として経営を行っていた時、自分への戒めとして戒名を付けたことがあります。 「世襲無挑戦成上居士」と「活過差夢旅新業居士」の二つです。 前者は「せしゅう・むちょうせん・なりあがり・こじ」と読み、後者は「かつかさ・むりょ・しんぎょう・こじ」と読みます。この二つの戒名は、確固たる経営信念を自分に義... 続きをみる

  • 創業者の敷いたレールを離れる決意 その2

    その1から続きます。 会社に体力をつけるには、多額の経常利益を計上できる経営姿勢に変換しなければなりません。内部留保資金がなければ、いつまでたっても、銀行融資に頼る経営から脱皮できません。 このような考えをもつ一方、後継者である私の役員報酬が低くおさえられている現実。私の役員報酬が潤沢でない分、税... 続きをみる

  • 幹部社員が謀反を起こす その2

    その1から続きます。 売却した会社の役員構成は私を含め四人でした。役員報酬を極力低額に抑えながらも、内部留保を心がけてきた経営でしたが、その姿勢は幹部社員に伝わらなかったようです。同族の経営陣だけがいい思いをしていると、とらえたのでしょう。 幹部社員の突然の離反がありました。価格破壊を武器に当地進... 続きをみる

  • 幹部社員が謀反を起こす その1

    私のM&決断は多くの人々を幸せにした戦略でしたが、決断前には経営上の恥部がありました。 大手企業と違い中小企業は、様々な「ずさん」な面が多々あります。給与体系であったり、就業規則の不履行の問題であったり、職場環境であったりと、「成長期」の企業は様々な問題を抱えています。 オーナー経営者から社長の座... 続きをみる

  • 優良企業経営ながらも延命の道を選ばす その2

    その1からの続きです。 M&Aを決断し僅か一年後、予測通り自力経営が継続困難となるハードルが立ちはだかり、物凄いスピードで大幅な減収減益の危機を迎えました。私がM&Aの道を決断していなければ、会社は倒産かあるいは自主廃業への道しか残されなかったでしょう。 一億円の資金的余裕など大手企業にとってはた... 続きをみる

  • 後継者が決断した自社売却を容認した創業者の度量

    過去を振り返り、創業者の偉大さを思い知らされることがあります。後継者教育の暗黙のメニューを私に提示してくれただけでなく、後継者の身でありながら私が独断した、自社の売却提言を受け入れてくれたのです。 「若いときの苦労は買ってでもせよ」という名言があります。「若いときの苦労はあとあと必ず役にたつという... 続きをみる

  • 取締役「妻」というM&Aの偉大な協力者 その5

    その4からの続きです。 中小企業の同族経営では一般的に、先代経営者から事業承継される時期は、子供の養育費や、生活費が後継者にとって一番重くのしかかっている時期ではないでしょうか。その収入の源となっている会社を売却しようとするわけですから、妻が家業に従事していなければ、会社の実情にうとい後継者の妻は... 続きをみる

  • 取締役「妻」というM&Aの偉大な協力者 その4

    その3からの続きです。 自社の問題点や顧客動向を掴むには、経営者自らがあらゆる問題意識を持つことが重要です。私自身経営に対する様々な問題意識を持っていましたので、この問題意識を現状分析する上で「取締役社長室長」という妻の役職は適役でした。 私が様々な形で社員とコミュニケーションをとろうとしても、社... 続きをみる

  • 取締役「妻」というM&Aの偉大な協力者 その3

    その2からの続きです。 私は「物事を悲観的に考え、楽観的に対策を進める」ことを信条としています。しかし、「楽観的に物事を考え、悲観的に事を進める」経営者が多いものです。M&A売却の決断において成功、失敗を語れば、楽観的に物事を考える経営者は、自社が危殆に瀕することなど想定外です。危殆に瀕しているこ... 続きをみる

  • 取締役「妻」というM&Aの偉大な協力者 その2

    その1から続きます。 M&A成立時に備え、実印や、銀行印、小切手帳、手形帳を私の管理下においておかなければなりません。M&Aの実務を創業者が手伝うということはいっさいありませんでしたが、取締役社長室長として間接部門を統括している妻は、この状況にどのように対処すべきかをちゃんと心得ていたようです。 ... 続きをみる

  • 取締役「妻」というM&Aの偉大な協力者 その1

    会社の経営において、経営者の「妻」の存在やその能力が語られることは少ないようです。私の経営していた会社は同族でしたので、大方のスモールカンパニーの構成のように、私の妻も取締役のひとりでした。肩書は「取締役社長室長」というもので、社員総数52名の中で女子事務員5名のリーダーとして、事務、経理、総務の... 続きをみる

  • M&Aの恩師との出会いで売却を決断 その1

    企業の存続に必要なことは、企業の生々流転のサイクルを知り、各期ごとの特徴や形態のパターンをつかみ、衰退期を迎える前に成熟期から再生期にスムーズに移行できるよう、事業の柱を次々に構築していくことです。 衰退期に入らず再生期を迎える企業と、そのまま衰退期を迎えてしまう企業との間には、いったいどこにどの... 続きをみる

  • 創業者が与えてくれた四つの気づき

    私が売却した会社を振り返り、様々な場で話をする機会を与えられると、いつのときも、私の父である創業者のワンマン度を話題にします。「金は出さない」「口は出す」「決裁権を与えず」「自ら責任は取らず」おまけに、銀行印と会社実印は自宅で父自らが保管していた、という話題です。当時の私は、ワンマンというよりも独... 続きをみる

  • 後経営権のない後継者の自惚れ

    私が売却した会社の経営権と代表権を説明しましょう。売却時の役員は、創業者である父が代表取締役会長、後継者の私が代表取締役社長、取締役に母と妻という、典型的な同族中小企業の役員構成でした(父母は既に他界しています)。 私が売却した同族企業の役員構成を知り、みなさんはどのように思うでしょうか。社長は私... 続きをみる

  • M&Aの恩師との出会いで売却を決断 その2

    その1から続きます すべてが猛スピードで激変している経営環境下で迎える衰退期は、会社にとって致命傷になります。私の会社には、衰退期に至ってからの再生のための事業の柱を構築する余裕はないものと判断し、私は現状のままでの会社の再生を断念しました。この時点での財務状況は、確かに実質無借金で、内部留保資金... 続きをみる