人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

会社売却行うは易し売却後の人生は難し



プロフィールにも明記してありますが、
私は父親から承継した中小企業をM&Aで売却後、売却益で第2創業し現在に至っています。
現在宮城県仙台市に移住していますが、2002年2月まで、人口約9万人の城下町山形県米沢市で、親子2代に渡り同族の中小企業を経営していました。父親が創業者であったため、私は世襲で社長を承継した、いわゆる二代目経営者でした。


その中小企業の経営者であった私は、様々な事情からM&Aという手法で第3者に自社の経営を委ね、私は別会社を創業したのです。49才の時でした。
現況は、M&Aで明るい老後の人生を迎えていますが、売却を決断しようとした際は悩みぬきました。
・売却して会社はどうなるのか
・社員は退職に追い込まれないだろうか
・社員はどのように私を見るだろうか
・地域内でどのように思われるだろうか
・家計や暮らしはどうなるであろうか
・果たして売却が成立するのであろうか
・売却後はどのような人生になるのであろうか
・・・連日悩み続けました。


当時の私の悩みとは裏腹に、今では後継者不在の中小企業にとって、M&Aが最高の事業承継手法と認識されるようになってきました。
しかし、公になっていない大きな問題があります
それは・・・。


「犬も歩けば棒に当たる」の諺に類似し、「犬も歩けばM&Aに当たる」に置きかえられるほどM&Aの言葉が乱立し、M&Aの言葉が独り歩きしている危惧さえ感じられる時代に入っています。
このため中小企業M&Aの真実が伝わらないまま、歪曲(わいきょく)され受け止められている懸念があります。M&Aのスキルや会社の存続にばかり比重が置かれ、売却を決断した経営者の売却後の人生がおざなりになっています。


優良企業が自社を売却すれば、多額の売却益が手に入り、第2の人生の資金となります。しかし、売却から20年の人生経験値から、売却後の元社長の生きがいという点について、少々疑問を持っています。


経営者は多忙といつもつぶやきながらも、それは生きがいのひとつでもあったはずです。その生きがいが売却益と引き換えに失われるのですから、M&Aを実践するには、売却後のしっかりとした生きがい作り計画が不可欠です。しかし、売却後のネクストステージに対し経験値を基にアドバイスできるアドバイザーが不足しています。


自社(事業)売却後、自らの売却成功事例を単発的にセミナー等で公表する事例は多数見受けられますが、売却後から長年にわたる人生を開示している事例は皆無かもしれません。


M&Aの存在をしらず廃業しようとしている経営者
M&Aを決断できず途方にくれている経営者
M&A売却後の余生を悲観し立ち止まっている経営者
M&Aは大企業の戦略と勘違いしている経営者
そして
売却後の人生計画を後回しにM&Aを決断する経営者


中小企業のM&A売却は、3社(会社・社長・社員)がハッピーになる戦略と思っている私にとって、このような経営者を知ると手を差し伸べたくなります。


不思議なことに(私が不思議に思っているだけのことかもしれませんが)中小企業のM&A売却は、「会社」が継続することで社員の雇用が継続されることの解説に比重が置かれ、売却後の「社長の人生にスポットが置かれることはありません。売却後の生き方を開示できる私のような経験者が不足しているからです。


売却した会社が隆昌しながら生き残り、売却した経営者も同様に、売却後の人生を堪能できることでM&Aが成功したと言えるのではないでしょうか。私の売却した会社は21年後の現在では売却時よりも数倍も繁盛し、私は老後の生活を謳歌しています。


いばらの道を歩んだものの、私のM&A人生を語り部としてお話する機会を持つことで、廃業を思いとどまる経営者が一人でも多く現れ、M&Aで事業が継続されることになり、さらに売却した経営者自身も私と同様に、明るい老後を迎えられるのではないかとの思いから「語り部・M&A」の活動をスタートしました。


中小企業のM&Aは、間違いなくこれからの時代に求められる事業承継手法の一つです。国策での支援もスタートしています。
社会の変革が目まぐるしい現代社会、古くなった既存の経営経験値だけでは荒波を乗り越えることは困難な時代です。将来の自社の姿を想像し、企業の存続と発展の為に今なにをすべきか。後継者不在のまま事業承継が待ち受けている経営者の英断が求められています。