人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

M&Aを決断するのは誰? 後編


前編からの続きです。


私はスムーズに第2創業の事業を選定しましたが、一般的に家業に従事している間は、自分の天職について無関心の為、家業以外に業態転換を必要とした時、自己の天職探しに戸惑う後継者が多いのも事実です。


現経営者、後継者、それぞれの妻からの反対や、親族からの反対もM&A売却を決断できない理由に挙げられます。身内の反対は抵抗勢力となり侮れない存在として立ちはだかります。さらに、地域間での風評も気になります。これらの様々な問題が絡み合い、M&A売却の決断を遅らせます。同族中小企業経営者の売却決断は、「M&Aの支援者がいない」とか、「M&Aのスキームを知らない」などという問題ではなく、M&で売却する「不退転」の決断ができないことが問題なのかもしれません。


同族中小企業には売却決断できない様々な問題が潜んでいます。中小企業対象の国策でのM&A支援策も増え、経済産業省も中小企業同士のM&Aを後押ししています。しかし、M&A決断できない問題に付け加え、見栄やプライドからM&A売却の決断を躊躇してしまい、生き残りの機会を逸してしまうことの多いのも事実です。老舗企業では後継者不在での経営破綻が増えています。いくら後継者不在といっても、老舗企業の経営者が長年続いた家業を売る決断をできないのが現実かもしれません。


コロナによる人手不足から、現状の中小企業経営は従業員確保が困難になっています。さらに、多くの中小企業では相続税負担が重く、身内への事業承継に難儀しています。社員に継がせようにも、社員自身が株式取得の資金調達不可能という問題に直面してしまいます。一言で事業承継といっても、同族中小企業においては様々な問題が山積みです。このような問題が山積みとなっている中小企業の事業承継において、解決の手段として、M&A戦略がさらに注目されているのです


同族中小企業には、本ブログで開示している以外にも、オブラートで包み込まれ、売却決断できない数々の問題がまだまだ潜んでいるのが現実です。しかし、M&Aを自社の存続と発展に活かす為には、決断者自身がオブラートの中身を知り、オブラートを溶かすための勇気と、中小企業のM&Aスキームや問題点について、自ら学習することが必要と私は思うのです。


巷では著名なM&Aコンサルタントがカタカナ語や英文字の解説と共に、さっそうと登場し人気を誇っています。


しかし、中小企業の大半は、先代経営者が経営支配権を所有しており、自社株の譲渡には譲渡制限があり、大手上場企業のように株式の買い集めで、知らぬ間に、他者に経営権取得されることなどないのです。一般的には、中小企業のM&Aは友好的に進んでいくのが通常です。M&Aについて知識のない後継者は、中小企業のM&Aスキームや手順を自ら学習し、自社の状況に適応する仲介アドバイザー選定の目利き力を持つことです。


私は後継者という立場で「M&Aを決断」し売却を成功させましたが、私のM&A売却成功要因最大のポイントは、創業者であり、先代経営者であった父に、M&Aを決断させる「説得力」と実力のあるM&Aアドバイザーの指南にありました。


繰り返しますが、M&Aの決断者が誰であろうと、三分の二以上の株式保有者を説得できなければM&Aの議決はできません。同族中小企業の売却では、三分の二以上どころか株主全員からの同意が必要とふまえておいてください。