人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

コロナで淘汰された旅館・生き延びた旅館

二つの旅館があります。コロナウィルスの影響を受けながら、M&Aで生き延びた旅館と、倒産した旅館です。いずれの旅館も法人化されている企業です。


淘汰されてしまった旅館は、福岡博多の奥座敷として知られる原鶴温泉成生閣(かいせいかく)です。他地区との競合が激化し原鶴温泉自体の集客が減少していたうえ、施設の老朽化も進み、集客力も低下していたようです。新型コロナウィルス感染拡大により、先行きの見通しも立たないことから破産となってしまいました。


一方事業譲渡で生き延びている旅館があります。仙台市太白区秋保温泉の老舗旅館、岩沼屋ホテルが大江戸温泉物語ホテルズに旅館の事業を譲渡しました。岩沼屋ホテルは秋保温泉の老舗旅館ですが、競争の激化に加え、大規模な改修も必要となり、新型コロナウィルスによるキャンセル増加で事業譲渡に至ったようです。


岩沼屋ホテルは屋号が継続されていましたが現在改修を行っており、6月12日「TAOYA秋保」として新装オープンになるようです。


両者共コロナウィルスに影響を受けた旅館ですが、一方は淘汰され、一方は生き延びています。その差はどこにあるのでしょうか。


起死回生決断のタイミングではないでしょうか。


原鶴温泉成生閣は2017年7月の九州北部豪雨でも影響を受けながら営業を続けてきたものの、さらにコロナの影響が重なりました。豪雨の影響を受けた際に、いちはやく売却や事業譲渡を決断したならば買い手が現れ、生き残りができたかもしれません。


岩沼屋ホテルは事業譲渡を決断しましたが、事業譲渡も一朝一夕に決まるものではありません。以前から、M&Aを検討し準備を進め、体力がより疲弊する以前に事業譲渡が成約したのではないでしょうか。


東日本大震災を始め、100年に一度と言われた大型台風、そして各地での大型地震、さらには目に見えないコロナウィルス関連の経営破綻等々、自然災害の猛威は突然、優良企業を奈落の底に落とし込んでしまいます。


後継者不在で優良企業といわれている中小企業でも、あっという間に淘汰されてしまう可能性は高いものです。自然災害やコロナ禍の猛威はこれからも続くことが予測されます。


コロナウィルスの影響でM&Aの中止や延期が相次いでいます。買手の企業も疲弊していまるからです。しかしながら、岩沼屋ホテルのように、決断のタイミングと疲弊する前の企業であれば、余力のある買い手が現れるものです。


買い手においても、現在の事業内容では疲弊していくという事を逆手にとって売り手側が売却を考えるならば、買い手企業も現業からの脱皮を摸索しているかもしれない、と考えることができます。そうであれば売却側も、譲受け企業が現れるのを待つだけでなく、買い手を絞り込んで、どのような企業と手を組めば相乗効果が現れるのかを、買い手側企業に積極的にアピールする手段が必要です。


売り手側企業を譲り受けることで、買い手にとっての相乗効果アイデア提供するという、売り手側からのアプローチは、売り手と買い手の双方にとって、ピンチをチャンスに変えるアイデアとなるはずです。


M&Aの中止や延期がではじめているといいながらも、体力のある企業は、現業の落ち込みを立て直すために、異業種の柱を創ろうと考えるはずです。そこにはM&Aが介在します。


現在のコロナ影響のピンチをチャンスとらえられるか否か、コロナ倒産になってしまうか、経営者の英知が求められています。