人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

経営権で支配する創業者の権力 その1


一部の同族中小企業の創業者と後継者の間には、外部から理解されにくい大きな力関係があります。そこでは組織というものが機能せず、絶対的な力を保持している創業者の鶴の一声で物事が進んでいきます。


そんな馬鹿な…と言われるかもしれませんが、同族中小企業を顧客とする一部の税理士の皆さんにはうなずいて頂けるのではないでしょうか。


ここでは、「ビックモーター」と「ジャニーズ事務所」、そして「父が創業した中小企業を私が20年前売却した」3社を例に取り、中小企業で絶対的権力を誇る創業者の弊害について経験論からの持論を述べてみたいと思います。


自社株式の3分の2(67%)をもてば経営を支配できます。創業者が自社の憲法となり67%の株式を保有すると、創業者に問題があっても、後継者、社員が創業者を追い出すわけにはいかず、前述した鶴の一声で物事が進んでいき、経営に弊害が生じます。


創業者が大株主ということは創業者が経営の支配権を持ち、創業者が会社の憲法になってしまう恐れがあります。何事もなく物事が進んで行っているうちは好ましい経営ではなくとも問題なく進んでいきますが、ひとたび何らかの不祥事が発覚した時、これらの事実が浮きぼりになっていきます。
※経営権については「実質社長と暫定社長」を参照ください。
https://melsa.muragon.com/entry/115.html


私が売却した会社の大株主は83.5%を保持する創業者の父でした。私は16.5パーセントの保有でした。当然ながら創業者の父が売却を容認しなければ売却は成立しません。私が売却を決断実践しなければ、順調な経営から一転して、優良中小企業であった私の会社が倒産の危機に瀕したかもしれません。


私が売却を決断し創業者に提案したのですが、うまく行くはずがありませんでした。私の売却提案に対し、絶対的経営支配力を持つ創業者(当時は代表取締役会長)は、私の社長職を解き解任する動きがみえ隠れしていました。しかし、我が社の生き残りを図るには売却以外に道はなし、と腹をくくり、創業者を説得し続けた結果、最終的には創業者も売却を容認し、老後を謳歌している現在の私があるわけです。


何故売却したかについては別途投稿していますのでここでは割愛しますが、経営権を持ちワンマン経営を施していた創業者に比べ私の非力さについては後程(その3)で私のふがいなさをしたためます。


その2に続きます。