人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

M&Aの恩師との出会いで売却を決断 その2

その1から続きます


すべてが猛スピードで激変している経営環境下で迎える衰退期は、会社にとって致命傷になります。私の会社には、衰退期に至ってからの再生のための事業の柱を構築する余裕はないものと判断し、私は現状のままでの会社の再生を断念しました。この時点での財務状況は、確かに実質無借金で、内部留保資金(現預金)も満足な状態でした。しかしながら、急激な減収減益の兆しが見え隠れし、さらには社員給与などさまざまな経費を積み重ねてみると、財務状況もすぐに悪化するものと予想したのです。


このようなときに、経営者のとるべき施策は何か。私の暗中模索が始りました。そして、さまざまな起死回生の手段を模索するうちに、M&Aという「事業引継ぎ」戦略情報にぶつかりました。しかしながら、中小零細企業のM&Aというという経営戦略について教示してくれる有識者が、当時の私の周りには皆無だったのです。この時点でM&Aアドバイザーの存在など知るよしもなく、私は仕方なく独学で勉強を始めました。


現在ではM&Aに関する教示書が溢れていますが、当時、M&Aに関する本は一握りしかありませんでした。あったとしても、それは大企業向けに編集されたもので、中小企業向けに書かれたM&Aの参考書など、ほとんど出版されていなかったのです。


そんなとき、インターネットでM&Aの情報を探し求めていると、「中小企業M&Aの時代が来た」という本に巡り合ったのです。著者の分林保弘氏は、当時、東京・霞が関【注1参照】にある日本M&Aセンターという、中小企業のM&Aをサポートする会社の代表の方でした。私は、早速この本を入手してみました。


そして、同書を終えた私は、この本の内容によって、まさに私に救いの手が差し伸べられたのだと確信しました。すかさず私は、分林氏のところに相談の電話を入れ、実際にお会いし相談を繰り返すうちに、日本M&Aセンターとアドバイザリー契約を結ぶことになりました。


分林氏のご著書との出会いがきっかけとなり、日本M&Aセンターという力強い味方と共に、M&Aという戦場に臨んでいくことになったのです。


私が一冊の本と巡りあったことにより、M&Aという戦略にめぐりあい、第3者への事業引継ぎを成功させることができました。この本との巡り会いがなければ、M&A決断の遅れから淘汰されていたかもしれません。今度は私の体験が、事業承継に悩むひとりでも多くの経営者の一助となればと思っています。



【注1】日本M&Aセンターは東証プライム上場企業となり千代田区丸の内に移転しています