人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

ピンチをチャンスに変える発想

下記は令和2年6月河北新報朝刊「持論・時論」で掲載されたものです。タイトルは「M&Aで第2創業」というタイトルで、M&Aで第2創業しコロナのピンチをチャンスに変えるという考えかたでした。当時の私の考え方が正しかったのか否か、原稿内容をそのまま投稿してみます


新型コロナウイルス感染拡大で全国の中小企業が存続の危機にひんしている。なぜ経営が厳しくなったのか、見方を変えれば自社事業のウイークポイントが浮かび上がる。業態転換や新分野へ進出する「第二創業」で生き残れることに気付くべきである。2の矢(事業)、3の矢と数本の矢が一緒になれば折れる(倒産)確率は低くなる。


今回のコロナ禍に対応したつなぎ資金が登場し、借りやすくなっている。さらに、国や各自治体は補助金や助成金、給付金などさまざまな金融支援策を取っている。これら緊急融資によって調達した資金を現業の立て直しだけではなく、新ビジネスへの投資に向けるのも一考である。ピンチをチャンスに変える発想だ。


今、多くの企業が疲弊しているのは、非常事態宣言による「密閉」「密集」「密接」の3密自粛による経済停滞によるものである。3密に該当する事業者が苦しんでいる。自粛が解禁されれば急回復が見込まれるが、第2波が襲ってくる可能性は否定できない。その時、3密を事業とする企業は現業だけで継続できるだろうか。3密に該当しない事業を早急に検討するべきである。


第二創業に着手するなら、企業の合併・買収(M&A)で会社や事業を買収するという考え方も荒唐無稽ではない。私は18年前、父が創業した会社を売却し、現在の会社を起こしている。想定外の事態に直面した当時、そのまま事業を継続させれば売り上げは80%減になると予測した。そこで、淘汰される前に会社を売却し、売却益で現在の会社を設立した。
今、全国で企業が売り上げを減らしている一方で、体力がある企業も存在する。余力があるうちに経営権を譲り渡し、生き残った自らの経験知からM&Aでピンチをチャンスに変える第二創業を提案しているのだ。


現代は、ネットで会社や事業を買える時代。会社を買収する金額のハードルも低くなっている。新型コロナが終息しても、疲弊した既存事業だけでのV字回復は困難かもしれない。新型コロナに関連する補助金や融資で可能な業態転換や、既存事業に併設できる事業をM&Aという手段で探してみてはどうだろうか。企業を買うというのは大胆な発想かもしれない。しかし、0から1をつくるより、既存事業を買い、アイデアを加味する方が早く軌道に乗せられるはずである。


経済産業省の2017年の発表によると、後継者不在でいずれ廃業せざるを得ない中小企業は127万社あった。ある統計では、うち60万社が優良企業ながら廃業に追い込まれつつあるという。多くのマスコミが「大廃業時代の到来」などと恐ろしい言葉を使用し、中小企業経営者に対し警鐘を鳴らしている。


 M&Aは後継者不在中小企業にとって、最適な事業承継手段でもある。コロナで疲弊している会社が、後継者不在の優良企業に目を向ければ、双方がハッピーに至る出口戦略となるであろう。