人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

M&A「できる経営者」「ひるむ経営者」前編

会社は経営者の「器」以上に大きくはなりません。私の経営していた会社における私の器は三億円でした。私が経営していた会社を売却しようとした直前期の年商が三億円だったからです。


会社を成長させる過程には、一億円、三億円、五億円、十億円という年商ごとに壁があり、それぞれの年商の壁を達成して次の段階に進むためには、さまざまな経営革新を施していかなければなりません。


私が父の事業を継承するために入社したときの年商は一億円でした。三億円の年商に到達するための夢と希望、そして意欲を持って経営に励み、三億円の壁はクリアしたのですが、次の五億円の壁を目指す意欲はついに持つことはありませんでした。それは、私の経営していた会社の環境と、その業界で目指す私の器が、三億円ということだったのかもしれません。


人間は三億円と目標を決めると、五億円を目指す努力はなかなかしないものなのです。


つまり、三億円の器の経営者は、五億円の器の経営者より、必然的に経営スケールが小さくなってしまうのです。とくにスモールカンパニーでは、組織がほとんど機能しておらず、「社長=会社」となってしまい経営者の成長が止まってしまえば、会社の成長も経営者の器に比例してストップしてしまうのです。


会社を成長させるためには、まず経営者である社長の器を大きくしなければなりません。


しかし現実には、多くの後継者は、創業者の起業した事業をそのまま継承しているのではないでしょうか。


それは、後継者が継承する時点での中小企業の事業の多くは、すでに成熟して転換期を迎えているケースが多く、さらに成長するためにはあらゆる角度からの経営革新が求められるからです。また、各業界が成熟度を増している今日では、過去の成果だけで事業を継続するのであれば、企業の存続そのものが危うくなることを心得ておくべきです。


後継者のやるべき経営革新のひとつに新事業の創出があります。後継者には先代経営者の敷いた事業のレールがあり、少なくとも生活に追われることのない余裕というものがあります。しかし余裕がありながら、多くの後継者は、自分でやるべきことや、自分がやりたいことが、なかなか探しだせないのではないでしょうか。