過去の経営手法に立ちはだかる壁 後編
前編からの続きです。
資金力と経営体力の弱い中小企業において、不祥事が勃発してからの対応ではすでに手遅れです。業種や企業規模に関わらず、社員からの内部告発など受けぬよう、法令尊守の徹底が企業内にどれだけ浸透しているかが企業の存続と発展の鍵かもしれません。
しかし、法令順守を徹底するには様々な整備が求められ、多額の資金を必要とします。その資金が捻出できず経営を続けていくと、ある時思わぬところから不祥事が発覚し、優良企業があっという間に破綻していく時代です。
団塊世代経営者が創業した数十年前の経営価値観や環境は、現代と比較すると大きな変化があります。この変化を肌で感じ、その対応策を早めに実行することが求められます。
後継者不在企業の優良企業においても、いつなんどき、予測できない不祥事や事態が勃発するかわかりませんので、M&Aを事業承継の手段とするならば、早めのM&A決断が必要です。M&Aの決断が遅れた結果手遅れになってしまうかもしれません
社会やビジネス環境の変化で、現在に至るまで多くの不祥事や予測できないビジネスの変化に見舞われ、優良企業と言われていた企業があっというまに淘汰されてしまっている現実が多数見受けられます。
事例をあげてみましょう。
労働法や就業に関する法令は従業員にとって優位になり、長時間労働によるサービス残業や労働災害隠しを従業員に強制すると、ブラック企業として汚名をきせられ、その現実をマスコミが一斉に報道し、その企業は追いつめられていきます。
「パワーハラスメント」という言葉があります。同じ職場で働く者に対して、上司が部下に精神的、身体的苦痛を与えると「パワーハラスメント」として経営者が監督官庁に訴えられます。団塊世代経営者が数十年前に創業し、会社を軌道に乗せるための一手法であった、社員への根性論や精神論を基にしたリーダーシップは、過去のようなやり方で社員に接してしまうと、「パワーハラスメント」として訴えられてしまうのです。
「パワーハラスメント」以外にも、社員を辞めさせようとすると「リストラハラスメント」。性的なことやいじめをすると「セクシャルハラスメント」。宴会で酒を強要すると「アルコールハラスメント」。未婚の女性に早く結婚しなさいよ、などと言うと「マリッジハラスメント」。人の容姿や接遇・生活などで揚げ足をとると「パーソナルハラスメント」などなど。その他多くのハラスメントで経営を難しくしています。
売上・利益好調であった優良企業が、不祥事という壁にぶち当たり、その壁が予想以上に高く、そして強く、乗り越えることが困難になることも考えられます。
思わぬところから発覚してくる不祥事を悠長にとらえ、対策が後手に回ってしまうと、壁がさらに高く、強くなってしまい、壁を乗り越えるどころかあっというまに淘汰されてしまいます。
後継者不在の優良企業で、M&Aで第三者に事業引継ぎを検討されている経営者の皆さんは、この現実をしっかりと認識し、決断のタイミングを逃さないよう注意が必要です。どのような優良企業でも、決断時期がおくれてしまうと、M&A成約が困難になってしまいます。
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