人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

終った経営者にならないために その1

数年前上映され話題となった映画作品のひとつに「終わった人」があります。定年を迎えた男のまだまだ終われない人生の奮闘記です。舘ひろしさんと黒木瞳さんの主演で映画化したハートフルコメディです。大手銀行の出世コースから子会社に出向し、そのまま定年を迎えた舘ひろしさん演じる田代壮介。世間からは「終わった人」と思われ、仕事一筋の人生を歩んできた壮介は途方に暮れます。一方の主役黒木瞳さん演じる、美容師の妻・千草は、かつての輝きを失った夫と向き合えずにいました。


壮介は「どんな仕事でもいいから働きたい」と再就職先を探すのですが、これといった特技もなく、さらに東大卒という肩書が邪魔するなど、定年後の男に職など簡単に見つかるはずがありません、しかし、すでに止まってしまったかに思えた壮介の運命が、ある人物との出会いから大きく動き出していく、といった概要の映画です。


この映画を反面教師とすることで、売却後の経営者の生きがい作りのひとつになるものと思い紹介してみました。自社売却後、終わった経営者にならないための人生計画が必要と思うからです。原作は内館牧子さんの「終わった人です」。売却を視野に入れている経営者のみなさんには、売却後の余生を探る参考書として、一読されることをお薦めします。「終わった人」を「終わった経営者」と入れ替え、自らが主人公としてイメージしていくことで「ビジネス」に従事していたありがたさを実感でき、さらなる目標がみえてくるかもしれません。


前述した「ある人物との出会い」は、新規ビジネスに導かれていく出会いです。リタイアを経験してみて初めて分かることは、目標なき人生の喪失感です。売却した後、完全リタイアから一か月程度は解放感に浸ることができます。しかし、その後の目標が見つけられなければ抜け殻になる恐れがあります。長年ビジネスの世界に従事してきた経営者は自由時間の使いかたに不慣れです。経営者としてビジネスの最前線にいた時の経営者は、会社主導で様々なスケジュールがあり、自らの行動様式のオン・オフも会社に所属していることでメリハリをつけることができました。


しかし、リタイア後は自分自身で自分の行動様式をつくり、自分を管理していかなければなりません。売却は成功したものの、時間の経過と共に、元経営者時代のビジネスを介した部下や取引先、さらには関係団体との交流もなくなり、目的を失ってしまう危惧があるからです。「終わった人」ならぬ「終わった経営者」になってしまうのです。


その2に続きます。