相続税対策の不備は死活問題 その1
私の経営していた会社は二つの工場を有し、工場の敷地総面積はおよそ千八百坪ほどありました。このうち、創業社長である父が興した工場は、本社工場と称して約三百坪ほど、残りの千五百坪ある工場は、私の主導で一九九七年に買い求め稼動させた工場です。
私が購入したこの工場は、全てを会社名義として登記したのですが、一方の本社工場の敷地と建物は、創業社長(父)、創業社長夫人(母)、そして会社といった三者の名義になっていたことが、M&Aを進めていくうちに判明しました。
正直なところ、私は土地・建物の所有者が「だれなのか」ということに、薄々疑問には思っていたものの、きちんとした問題意識を持っていなかったことも事実です。
土地・建物の権利書や区画等の資料は、創業社長の自宅に保管されており、創業社長と同居していなかった私はその保管場所も知らず、M&Aを決断するまで一度として見たことがなかったのです。
相続対策も、創業者のアドバイザー的役割の顧問税理士と創業社長間で、創業者の自宅においてその施策を講じているものとばかり思っていました。それほど私は、相続ということに無頓着だったのです。
しかしながら、M&Aを進めようとしたときになって、なんの相続対策も施されていないという事実を知ったのです。創業社長七十八才、私が四十八才の時で、まったく私の甘さでした。
その2(Ⅰ月10日投稿予定)に続きます。
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