人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

母他界の3日後に認知症の父が後を追う その3

その2から続きます。 成年後見制度というものがあります。 認知症などの理由で判断能力の不十分な方々の財産や、日常生活を保護する制度です。判断能力を欠く状況にある人を守るために、裁判所が「後見人」を選任します。 誰が後見人に選任されるか・・・・ 先代経営者が認知症になった場合、「後見人」の選任が事業承継のポイントとなってしまいます。 私の事例で言えば、成年後見人制度については、何の手立ても講じてい…

母他界の3日後に認知症の父が後を追う その2

その1からの続きです。 M&A売却成立の半年後、元気だった父が突然、認知症になってしまいました。記憶が正常なうちに株主の調査を行いましたので、株主の調査も難航はしましたが判明することができました。 父の認知症に加え、経営支配権をもつ父と母が同時に他界するなどとは考えもしないことが現実として起こりました。 株主名簿不在の同族中小企業の株主名簿は、先代経営者の頭の中にあります。その頭の中にある記憶が…

母他界の3日後に認知症の父が後を追う その1

同族中小企業では、自社株式が分散しているケースが多いのではないでしょうか。分散した株式でも先代経営者の鶴の一声で自社株式のとりまとめができると考えているようですが、困難を極めることが多いのも事実です。 それでも株主がわかっていれば良いのですが、経歴の長い会社では株式が拡散しており、株主が誰であったかわからなくなってしまっているケースが多いのではないでしょうか。 私の売却した会社においても株主の調…

売却したお金の受け取り方

売却が成立した後のお金はどこで受取るのでしょうか。数百万、数千万円、あるいは数億円で売却したお金はどこに行ってしまうのでしょうか。 株式会社を売却した場合、譲渡金は売却した株主の銀行口座へ振り込まれるのが一般的です。株式会社ですから当たり前・・と一蹴されてしまいそうですが、私にとっては当たり前ではなかったのです。 私は会社が売れた後、その売却益で新会社を第2創業することが目的でした。当時の私はM…

売却を決めた後継者のたわごと

後継者として経営を行っていた時、自分への戒めとして戒名を付けたことがあります。 「世襲無挑戦成上居士」と「活過差夢旅新業居士」の二つです。 前者は「せしゅう・むちょうせん・なりあがり・こじ」と読み、後者は「かつかさ・むりょ・しんぎょう・こじ」と読みます。この二つの戒名は、確固たる経営信念を自分に義務付けることを目的とし、私の戒めとして自分自身に付けた戒名であり、私が他界した際にに備えて事前取得し…

創業者の敷いたレールを離れる決意 その2

その1から続きます。 会社に体力をつけるには、多額の経常利益を計上できる経営姿勢に変換しなければなりません。内部留保資金がなければ、いつまでたっても、銀行融資に頼る経営から脱皮できません。 このような考えをもつ一方、後継者である私の役員報酬が低くおさえられている現実。私の役員報酬が潤沢でない分、税務署への納税額が増えているという矛盾に付け加え、万が一の場合の相続税ということが頭の中をよぎったので…

創業者の敷いたレールを離れる決意 その1

過去を振り返ると、事業承継における様々ないばらの道を通ってきましたが、嬉しいこともありました。地元税務署からの表彰です。 私がM&Aで売却した会社は、M&A売却の二年前に法人税の優良申告法人として地元の税務署から「表敬状」を頂戴しました。三度目の表彰です。売却前の法人税の申告では、三千五百万円の経常利益に対して、千五百万円の法人税の申告でした。 中小企業においては、節税の一手法として経営者の役員…

幹部社員が謀反を起こす その2

その1から続きます。 売却した会社の役員構成は私を含め四人でした。役員報酬を極力低額に抑えながらも、内部留保を心がけてきた経営でしたが、その姿勢は幹部社員に伝わらなかったようです。同族の経営陣だけがいい思いをしていると、とらえたのでしょう。 幹部社員の突然の離反がありました。価格破壊を武器に当地進出を企てる新興企業に移籍していったのです。会社の営業内容と単価の機密を知っている幹部の離反ですから、…

幹部社員が謀反を起こす その1

私のM&決断は多くの人々を幸せにした戦略でしたが、決断前には経営上の恥部がありました。 大手企業と違い中小企業は、様々な「ずさん」な面が多々あります。給与体系であったり、就業規則の不履行の問題であったり、職場環境であったりと、「成長期」の企業は様々な問題を抱えています。 オーナー経営者から社長の座を譲られた多くの後継者が、その「ずさん」を改善する努力をしようとするはずです。しかし、「ずさん」の改…

騙されるなM&A詐欺と特殊詐欺 その4

その3からの続きです。 本来、M&Aに人情など必要ないのかもしれません。とくに、大手企業を対象にするM&Aの専門会社の場合はビジネスライクの傾向が強いようです。しかしながら、大手企業のM&Aと中小企業のそれには、経営者の感情の有り様に違いがあるということを知っていただきたいのです。 中小企業のM&Aは、経営者が自らの進路を断とうとする決断であり、まさに清水の舞台から飛び下りるような決断なのです。…