人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

経営者は社員の人生を預かっている その2

その1からの続きです。 社員の給与が閉ざされる危惧のある状況のひとつに、「後継者不在」という問題があります。会社に後継者がいなければ、現経営者に万が一のことがあった場合、その会社は頓挫してしまいます。 私がM&A売却に悩んでいた時に肩をポンと押してくれた日本M&Aセンターの分林会長(当時社長)。今ではM&Aの第一人者です。分林会長が、以前、事業承継に関する雑誌インタビューで、中小企業の事業承継の…

経営者は社員の人生を預かっている その1

経営者が会社の存在意義を考えるときに、福利厚生の充実や社内の環境整備以上に配慮しなければならないのが社員の給与です。社員は生きるために働いているのであり、給与は社員と家族の生活設計の基盤になるものです。当たり前のことですが、経営者たるものは、いかなる理由があろうとも、社員に対して給料の遅配や未払いがあってはなりません。 私の経営していた会社では、創業以来、売却決断までの三十八年間、給料の遅配や未…

継ぎたくない会社はさっさとM&Aしなさい!

後継者が存在せず、自社の出口がわからずに毎日を送っている中小企業経営者が多数存在します。 同族企業の事業承継をとらえた場合、先代社長から後継者にバトンタッチする時期の商品や、ビジネスモデルが十年経過しているならば、事業承継した商品やビジネスモデルだけでの事業継続は不可能・・・。私は2002年(当時49歳)にこのような考えの下、M&A売却で業態転換の起業資金を確保し、現在のメルサを第二創業に導きま…

優良企業経営ながらも延命の道を選ばす その3

その2からの続きです。 一億円の内部留保があれば、さらなる事業への投資ばかりではなく、社内環境の整備にも夢が膨らむものです。私の会社が営んでいたリネンサプライ業という業種は、繊維製品のリースとクリーニングの合体した業種であるため、クリーニング工場は蒸気を発生し、真夏には朝から温度計が三十度を指していました。蒸気を伴う仕事上通常のクーラー設備では効果がなく、工場で働く社員は、暑い中で働くことを余儀…

優良企業経営ながらも延命の道を選ばす その2

その1からの続きです。 M&Aを決断し僅か一年後、予測通り自力経営が継続困難となるハードルが立ちはだかり、物凄いスピードで大幅な減収減益の危機を迎えました。私がM&Aの道を決断していなければ、会社は倒産かあるいは自主廃業への道しか残されなかったでしょう。 一億円の資金的余裕など大手企業にとってはたいした金額ではないかもしれません。しかし、私が経営していたような中小零細企業にとっては、金融機関から…

優良企業経営ながらも延命の道を選ばす その1

その1 M&Aの決断は二〇〇一年四月のことでした。私の経営していた会社の決算は三月です。創業三八年目の経営成績ですが、売上高三億円、経常利益三千四百万円、減価償却二千八百万円という、決算書上では好成績の営業状況でした。もちろん粉飾決算などありません。 財務状況に関しては、現金、預金等の流動資産が二億四千万円、また、手形、買掛金等の流動負債と長期借入金等の負債の合計額が一億四千万円という状況でした…

後継者が決断した自社売却を容認した創業者の度量

過去を振り返り、創業者の偉大さを思い知らされることがあります。後継者教育の暗黙のメニューを私に提示してくれただけでなく、後継者の身でありながら私が独断した、自社の売却提言を受け入れてくれたのです。 「若いときの苦労は買ってでもせよ」という名言があります。「若いときの苦労はあとあと必ず役にたつという意味です。しかし、若いときに苦労を進んでしようという後継予定者は一握りです。できるものであれば「苦労…

語り部の妻からのメッセージ

「取締役妻という偉大な協力者」をご笑読いただきありがとうございました。私は文面にも登場している、語り部鈴木均の妻でございます。彼の文章には、恐ろしいほどの説得力があります。実際に経験したからこそ書ける、皆さんへのアドバイスだと思います。机上論ではなく、現実の生々しい内容も含まれているので他人事として目を背ける方もいらっしゃるかもしれません。 私は縁があって44年前に彼と結婚しました。長男でありま…

夫婦間の適度な距離の保ち方 その3

その2からつづきます。 その1及びその2をご覧いただいた方は、売却前も、売却後も夫婦睦まじく経過しているように見えますが、売却後大きな試練に襲われました。 6ケ月の別居生活に見舞われたのです。壮大な夫婦喧嘩でした。火種は、子育てや親族との付き合い方についての考え方の相違でした。売却後、私はネクストビジネスを第2創業し、自宅から車で10分の場所にオフィスを構えていました。夫婦喧嘩と共に自宅を飛び出…

夫婦間の適度な距離の保ち方 その2

その1からの続きです。 会社を高額で売れるほど立派に成長させてきた経営者は、良くも悪くも、どちらかと言えば頑固な性格が多いものです。「俺についてこい」と言わんばかりに、率先垂範で経営の舵を取ってきた猛者揃いかもしれません。しかし、ネクストステージにおいては、「俺についてこい」の率先垂範よりも、協調性と妻や家族への思いやりが重要になります。妻とのコミュニケーション、妻への思いやりはネクストステージ…