人生100年時代のM&A物語

49才の時父親が創業した会社を、父親在命中にM&Aで売却。その後、売却益で第2創業。売却決断実践から20年の経営者人生を綴ります。

相続税対策の不備は死活問題 その1

私の経営していた会社は二つの工場を有し、工場の敷地総面積はおよそ千八百坪ほどありました。このうち、創業社長である父が興した工場は、本社工場と称して約三百坪ほど、残りの千五百坪ある工場は、私の主導で一九九七年に買い求め稼動させた工場です。 私が購入したこの工場は、全てを会社名義として登記したのですが、一方の本社工場の敷地と建物は、創業社長(父)、創業社長夫人(母)、そして会社といった三者の名義にな…

M&Aの恩師との出会いで売却を決断 その1

企業の存続に必要なことは、企業の生々流転のサイクルを知り、各期ごとの特徴や形態のパターンをつかみ、衰退期を迎える前に成熟期から再生期にスムーズに移行できるよう、事業の柱を次々に構築していくことです。 衰退期に入らず再生期を迎える企業と、そのまま衰退期を迎えてしまう企業との間には、いったいどこにどのような違いがあるのでしょうか。 そのひとつの大きな要因に経営者の驕りがあげられます。驕りのある経営者…

創業者の父が憲法だったわが社の事業承継構造

新年あけましておめでとうございます。 本日より令和5年の投稿を開始します。 本年もご愛顧頂ければ幸です。 父が代表取締役会長、私が代表取締役社長、母と妻が取締役・・・・。これが、私の経営していた会社の役員構成でした。同族スモールカンパニーの典型的な役員構成です。四名の役員構成とはいっても、常勤役員は私と妻の二人だけでした。 企業は成熟期を迎えたら、そのまま衰退期を迎えるか、あるいは再生期への施策…

ぬるま湯に浸ってしまったわが社の衰退期を悟る その2

その1からの続きです。 私が入社した当時、会社は創業からすでに二十年を経過しており、生々流転の早いスピードに照らし合わせれば、すでに衰退期を迎えている時期です。いや、今の時代なら、すでに存在しない企業になっていたかもしれません。しかしながら、当時私の会社は、衰退期どころか発展期を迎えている会社でした。 というのも、規則に守られた許認可事業ということに加えて、社会保険点数も年々加算されていく状況に…

ぬるま湯に浸ってしまったわが社の衰退期を悟る その1

私の経営していた会社は、一九六三年(昭和三八年)四月の設立でした。私がまだ小学生の頃で、父が初代社長として創業した会社です。 現在、株式会社を設立するためには、発起人一名、株主一名でも登記が可能ですが、当時は、発起人、株主ともに七名を必要とした時代でした。資本金三百万円での株式会社設立でしたが、父は七名の株主を揃えるのにずいぶん苦労したようです。しかし、創業から三十八年後にM&Aを進めようとした…

創業者が与えてくれた四つの気づき

私が売却した会社を振り返り、様々な場で話をする機会を与えられると、いつのときも、私の父である創業者のワンマン度を話題にします。「金は出さない」「口は出す」「決裁権を与えず」「自ら責任は取らず」おまけに、銀行印と会社実印は自宅で父自らが保管していた、という話題です。当時の私は、ワンマンというよりも独裁と思っていたほどです。 しかし、父が他界し、私自身が事業承継という問題に本気で取り組んでから、私の…

「経営者の孤独」と「後継者の孤独」

経営者は孤独であるといわれます。経営者がどのように孤独であるのかは、経営者でなければわかりません。しかし、中小企業の先代経営者と後継予定者の孤独感は「天と地」ほどの差があると言っても過言ではありません。後継予定者と比べ、経営支配権を持ち、オーナーである先代経営者の「孤独」の度合いは生半可なものではないのです。経営権を持たない後継者は、後継予定者という立場でいるうちは孤独感が少ないものです。 さら…

後経営権のない後継者の自惚れ

私が売却した会社の経営権と代表権を説明しましょう。売却時の役員は、創業者である父が代表取締役会長、後継者の私が代表取締役社長、取締役に母と妻という、典型的な同族中小企業の役員構成でした(父母は既に他界しています)。 私が売却した同族企業の役員構成を知り、みなさんはどのように思うでしょうか。社長は私ですが、代表権が父と私の二名です。ここに私の会社の事業承継がうまくできなかった理由の本質があります。…

サンタクロースがM&Aに乗ってやってくる

大手企業のM&Aと中小企業のM&Aは似て非なるものです。大手企業(上場企業)のM&Aは弱肉強食的な意味あいが強いものですが、中小企業のM&Aは終始友好的に物事が進んでいきます。大手企業間のM&Aは大が小を呑みこみ、呑みこまれた側の企業が姿を消し、呑みこんだ側の企業に名称が変わってしまう、というのが一般的なとらえ方ではないでしょうか。 一方、中小企業M&Aにおいては、譲り受け側企業から新社長が赴任…

終った経営者にならないために その4

その3から続きます。 ここではPDCAを深く掘り下げて説明しませんが、「終わった人」「終わった経営者」にならないための目標設定や行動様式、さらに、自分自身を管理するために、私は次の6項目を読者の皆さんに推奨したいと思います。 「自分の居場所を作るネクストビジネス創業」 「社会と繋がるコミュニケーション力育成」 「夫婦間の適度な距離を作る方法」 「アクティブ高齢者になるための自己演出法」 「財産一…